私が世界を目指すわけは、創作活動のためです。
今年の3月、初めて海外に行きました。フィリピンのセブ島、QQEnglishです。
とにかく色が鮮やかで驚きました。セブパシフィック航空の機内の装飾やマクタンセブ空港から寮へ向かう道中、蛍光色に近い黄色や緑色に目を奪われました。日本で暮らす私にとって、鮮やかすぎるこの色彩は、ここでは日常の一部でした。その鮮明で陽気な雰囲気を纏った景色は、まさに異国でした。気候の違いが、セブ島の光や風、空や海、植物や果物(特に驚いたのがバナナの黄色)の発色に影響しているのだろうと感じずにはいられませんでした。日本では実感することのない色彩と気候の関係が気になりました。
絵画は世界中で描かれていて、私が好きな西洋の画家のクロード・モネやシスレーなどの絵は、題材や筆さばきも爽やかなものが多いと感じます。対して、日本の岸田劉生の「道路と土手と塀」には、じっとりとした表現が目立ち、その違いにヨーロッパの西岸海洋性気候や偏西風、日本の温帯湿潤気候が少なからず影響していると思い至りました。ヨーロッパよりも、夏は高温で湿度も高く四季の変化が明瞭な日本では、そのそれぞれの変化に敏感で繊細な表現になると思います。語学留学のはずが、絵画の表現を今までとは違う角度から考えるきっかけになりました。学校や本での学びでは得られないものを、自分の五感で吸収する貴重な体験になりました。
私は、油絵学科に在籍しています。日常の生活のことを描きとめています。世間で、どんな大事件が起きようと、社会が大きな問題を抱えていようと、それとは無関係に日々は過ぎていきます。それでも時には綺麗な景色に心が動いて、絵を描くという、そこには人間の鈍感な危うさと、反面、強さを感じていて、最近の制作にテーマになっています。まだ、見聞も経験も浅く、知識も技術も未熟ですが、より深い創作のために、もっと世界を自分の肌で感じ、いつか巨匠たちのような鋭い表現ができるようになりたいです。日本に帰ってきてからも、その思いは強くなりました。
フランスで19世紀後半にエコール・ド・パリの画家たちの多くがアトリエを構えたと言われている、モンパルナスという地域に行ってみたいと思うようになりました。日本人の藤田嗣治も滞在し創作活動に励みました。ラ・ロトンドやル・ドームというカフェは、様々な国から新時代の芸術文化を生み出す活気のある芸術家や文豪が集まり、語り合ったと言われています。
その場に強く魅かれます。どうしても一目見たいです。そして、パリには、ルーブルやオルセー美術館もあります。イタリアの世界遺産の建築、サクラダファミリアも見てみたいです。ニューヨークの本物のバンクシーの街の中のストリートアートにも強く興味をもっています。
今回のQQEnglishでの出来事を通して自分の了見の小ささを感じました。英語が苦手で絶対に無理だと思っていた3週間の語学留学を終えて、行動を起こそうとすることや、したいと望むことが大事だと思いました。そうすれば、叶っていくものだということも分かりました。海外に興味もなく英語学習に消極的だった中学、高校時代の私からは、これだけ英語を必要とし世界を見たいと思う自分を想像できませんでした。今は、目標とする素晴らしい芸術家や画家と同じ光や風を感じたいと思っています。
2020年には、日本でオリンピックがあります。私もいつか、芸術の祭典のヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展に出展できるような芸術家になりたいです。世界中のアスリートがそうであるように、今も世界では、たくさんの様々なアーティストが絵を描いたり、作品を作っていて、コンペやマーケットがあって、そして、それぞれがその視点で問題意識を持って創作活動が行われています。他国の作品を理解することで、自分の作品についても深く考えていきたいです。そして、人類・芸術史にとって新たな創造をしていきたいです。そうすることで、自分はもちろん世界中の人々の感覚を広げていくきっかけになり、争いごとの発端である、多様性や異なる価値観への根本的な理解に結びついていくことを願っています。