翻訳では届かない言葉|ワールドシリーズとアスリートたちが教えてくれた”自分の言葉で世界をつなぐ力”

英語は本当に必要なのか?
SNSやAI翻訳が普及した今、多くの人が「英語は本当に必要なのか?」と疑問に感じています。
けれど、”英語の必要性”とは、単に言葉を理解する力ではなく、「自分の想いを世界に届ける力」のことではないでしょうか。
2025年のワールドシリーズで、その答えを見せてくれたのが、大谷翔平選手でした。
世界中が注目したロサンゼルス・ドジャースの優勝パレードにて、彼はその日、通訳を介さずに、自分の声で世界に語りかけました。
その瞬間―「言葉が人を繋ぐ力」が、はっきりと形になったのです。
青い紙吹雪の夜

トロント・ロジャースセンター。延長11回、ブルージェイズ最後の打球が二遊間を転がり、ダブルプレーになりました。
マウンド上の山本由伸選手が両手を突き上げた瞬間、スタジアム全体が青い紙吹雪に包まれました。ドジャースが二年連続の世界一を決めた夜です。
歓喜のチームメイトたちがマウンドに駆け寄り、抱き合い、涙を流しました。
その数日後、ロサンゼルスで行われた優勝セレモニーでは、再びあの歓声が蘇りました。マイクを握った大谷翔平選手が、通訳を介さずに英語で語りかけたのです。
“I want to say I’m so proud of this team. I want to say you guys are the greatest fans in the world. I’m ready to get another ring next year. Let’s go.”
スタジアムは一瞬静まり返り、そして次の瞬間、これまで以上の歓声が爆発しました。完璧な発音ではありません。文法も決して流暢とは言えません。
それでも、その声には何か特別なものがありました。翻訳を超えた声の力が、世界をひとつにした瞬間でした。
あの声が心を動かした理由

優勝パレードの日、ロサンゼルスの街は青一色に染まりました。推定30万人のファンが沿道を埋め尽くし、ドジャースの選手たちを乗せたバスを待ち構えています。
大谷選手がマイクを握り、英語で語り始めた瞬間、騒がしかった群衆が静まり返りました。
「I’m proud of this team.(このチームを誇りに思います)」
その一言に、会場全体が揺れました。
「You guys are amazing.(君たちは最高です)」
そして、多くの人々の胸を打ったのは、彼が続けて語った次の一言でした。
「I’m ready to get another ring next year. Let’s go.」(来年、もう一つの優勝リングを手にする準備はできています。さあ、行きましょう!)」
通訳を介さず、自分の言葉でチームの未来を語ったその瞬間、観客の間に歓声と涙が広がりました。ファンたちは、大谷選手が単に勝利を喜ぶのではなく、すでに次の挑戦を見据えていることに心を動かされたのです。
米紙ロサンゼルス・タイムズは後日、「大谷はチームに完全に溶け込み、ロサンゼルスの街が彼を心から歓迎している」と評しました。
翻訳や字幕を介したメッセージでは決して伝わらない、抑揚や間の取り方、そしてその場に満ちる空気感。それらすべてが、一つの声に込められていました。
言葉は、情報を運ぶだけのものではありません。それは心を運ぶ器なのです。
AI翻訳では再現できない温度
ChatGPTやDeepLなど、翻訳ツールは驚くべき進化を遂げ、今やボタン一つで世界中の言葉を理解できる時代になりました。
しかし、もし大谷選手のあのスピーチが、AI翻訳でテロップとして画面に表示されていただけだったら、あの”心の震え”は生まれたでしょうか。答えは、おそらく「ノー」です。
言葉には「意味」だけでなく、「温度」があります。「間」があります。「息づかい」があります。
声のトーン、表情、そして言葉を選ぶときの一瞬のためらい―それらすべてが、人間のコミュニケーションを形づくっています。
アメリカ・ワシントン大学の計算言語学者、エミリー・M・ベンダー(Emily M. Bender)氏は、AIと言葉の違いについてこう語っています。
「私たちは、言葉を使うとき、そこに意図と経験を込めています。それは人間の生きた営みです。言葉を単なるデータとして扱うなら、人間であることの意味を失ってしまうのです。」(※出典:WHYY Radio Times, 2021)
AIが「情報」を正確に伝えるのに対し、人間は「感情」を伝えます。大谷選手の“Let’s do it!”という一言の中には、仲間と過ごした時間、汗と涙の努力、そして未来への希望が詰まっています。
その重みは、どんな翻訳アプリでも再現できません。英語は単に情報を共有する手段でありません。
英語には、心を伝える橋としての役割があり、その役割を十分に果たすためには、人の感情を乗せた声が必要なのです。
サッカーが先に見せてくれた未来

今では、日本人サッカー選手の多くが、海外クラブで英語を使ってインタビューに応じる機会が増えています
久保建英選手、三笘薫選手、冨安健洋選手らがその代表例です。
彼らは現地クラブの記者会見で堂々と英語を使い、自分の言葉で戦術を語り、チームへの想いを伝えています。
たとえば三笘選手は海外移籍後、英語力を向上させることで、チームメイトとより深いコミュニケーションを取れるようになったと語っています。
試合中も英語で意思疎通を図り、ピッチ外でも仲間たちと冗談を交わし合う姿が報じられています。
これは、20年前には考えられなかった光景です。かつて英語で会見をこなせる日本人選手はごく限られていました。中田英寿選手がその先駆けでした。
その当時と比べると、今日のように日本人選手が堂々と英語で語る光景を目にするのは、隔世の感があります。言葉は、まさに人と人とをつなぐ鍵と言えます。
野球にも訪れたグローバル化の波
野球はサッカーに比べて、長く言語の壁を抱えていました。
メジャーリーグで活躍する日本人選手は数多くいましたが、そのほとんどが通訳を通しての会話が主流でした。それがメジャーの当たり前だったのです。
ですが今、その風景が変わりつつあります。大谷翔平や吉田正尚といった選手たちが、英語でチームメイトと冗談を交わし、取材に応じる姿が日常的に見られるようになっています。
ロサンゼルス・ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、2024年シーズン中の取材でこう語っています。
「翔平は言葉を超えてチームに溶け込んでいます。通訳を介して話すときもありますが、彼自身が英語で冗談を言ったり、選手に声をかけたりすることもあります。その自然さが素晴らしいんです。」(※出典:Los Angeles Times, 2024年5月)
翻訳を介さずに伝わる「ありがとう」や「ナイスプレー」は、チームを一つにする力を持っています。
言葉の壁がなくなったとき、選手たちの絆はより深く、より強くなります。それは、単なる語学力の問題ではありません。共感の技術なのです。
相手の文化を理解し、その心に寄り添い、自分の心を開く。そのプロセスを通じて、人は本当の意味でチームメイトになれるのです。
英語は”世界と心を結ぶ翼”
翻訳アプリやAIがどれほど進化しても、本当の感動は「自分の言葉」からしか生まれません。
英語を学ぶということは、単に外国語を習得することではありません。
それは、自分の想いを世界に届ける力を育てることです。自分の心を、国境を越えて誰かに伝える勇気を持つことです。
大谷選手がマイクを握り、英語で語ったように―完璧じゃなくても、自分の言葉で話すことに価値があります。つたない表現でも、心を込めて伝えようとする姿勢こそが、人の心を動かします。
QQEnglishは、“Gateway to the World”。
世界へ踏み出すあなたの声を支える場所です。
正しい文法を学ぶことはもちろん大切ですが、それ以上に大事なのは、自分の言葉で思いを伝えようとする勇気です。
完璧さを追い求めるより、誠実に伝えようとする姿勢が、世界とあなたを繋ぎます。
翻訳では届かない言葉を、あなたの声で。
The world is listening. Speak your own voice.
(世界は聴いています。自分の声で話しましょう。)


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