フィリピン大統領とは?|現職・歴代大統領・選挙の仕組みまで徹底解説【2025年最新版】

フィリピンに旅行・留学・長期滞在を予定している方にとって、「大統領」や政治の基本構造を知ることは、安全面や経済、教育制度を理解するうえで欠かせません。
この記事でわかること
- フィリピンの大統領制の仕組みと他国との違い
- 大統領選挙の仕組みと次の選挙時期(2028年予定)
- 現職マルコス大統領の政策と最新動向
- 歴代大統領の一覧とフィリピン政治の流れ
- 英語教育・留学政策への影響と今後の展望
2025年現在の大統領は、フェルディナンド・マルコス・ジュニア(通称ボンボン・マルコス)氏です。
経済再建や外交バランスを重視し、前政権のドゥテルテ氏とは異なる穏健路線を打ち出しています。
記事の後半では、英語公用語政策や留学・教育への影響にも触れ、留学を検討する方にも役立つ内容をまとめました。
フィリピンの大統領制とは

マラカニアン宮殿(フィリピン大統領官邸) 引用元:Wikipedia
フィリピンはアメリカ型の大統領制を採用しており、「立法・行政・司法」の三権が分立しています。
大統領は強い権限を持ち、国の方向を決める中心的なリーダーです。
【 大統領制の特徴 】
| 項目 | 内容 |
| 国家体制 | 三権分立制:議会・大統領・最高裁がそれぞれ独立して機能する仕組み |
| 大統領の役割 | ・国家元首として国を代表 ・政府の長として行政を統括 ・軍の最高司令官として国防を指揮 |
| 議院内閣制との違い | ・日本のように「議会の信任」を失っても、大統領は任期中に辞任を迫られない ・ただし、議会を解散する権限も持たない |
| 憲法上の制約 | ・任期は6年 ・再選は禁止(一度きりの就任) |
この制度により、大統領は強いリーダーシップを発揮しつつも、独裁が続かないよう仕組みが整えられています。
フィリピン大統領選挙の仕組み
フィリピンの大統領は、6年ごとの国民直接選挙で選ばれます。候補資格や投票方式、副大統領との関係など、選挙制度の概要を以下の表にまとめました。
【 大統領選挙の仕組み 】
| 項目 | 内容 |
| 選挙周期 | 6年ごとに実施(次回は2028年予定) |
| 候補資格 | ・フィリピン生まれの国民 ・選挙日時点で40歳以上 ・読み書き能力を有する ・登録有権者で、選挙前に最低10年間フィリピンに居住 |
| 投票方式 | ・全国一律の直接選挙で実施 ・得票数の最も多い候補が当選する単純多数制(過半数は不要) |
| 副大統領との関係 | ・副大統領は大統領とは別に選出 ・そのため、異なる政党から選ばれることもある |
| 選挙管理委員会 (COMELEC) | ・選挙の公正な実施を監督する独立機関 ・候補者の資格審査、投票管理、開票監視、選挙違反の取り締まりを担当 |
副大統領が別選挙で選ばれる点が特徴で、異なる政党間の「連立型政権」となることもあります。こうした多様な政治構造を支えるのが、選挙の公正性を監督するCOMELEC(選挙管理委員会)です。
現職のフィリピン大統領:フェルディナンド・マルコス・ジュニア(Bongbong Marcos)
フェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領(2022年就任) 引用元:Wikipedia
2022年に就任したフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領(通称ボンボン・マルコス)は、フィリピンの政治・経済の方向性を大きく左右する存在です。
父フェルディナンド・マルコス元大統領の影響を背景に、経済再建・教育改革・外交の再構築を掲げ、国内外から注目を集めています。
以下では、略歴から政策の特徴、支持と批判の両面までを整理して紹介します。
略歴と就任年
- 1957年生まれ
- 父親は独裁者として知られるフェルディナンド・マルコス元大統領
- マルコス家出身で、副知事・知事・上院議員などを歴任
- 2022年5月の大統領選挙で圧勝し、同年6月30日に第17代大統領として就任
政策方針(経済・教育・外交)
経済政策
- ポストコロナ時代の立て直しを重点に、成長率回復・インフレ抑制・雇用拡大を推進
- 外国投資とデジタル経済の推進
- 前政権のインフラ整備政策を引き継ぎ、「Build Better More」プログラムを実施
教育・人材育成
- 学習貧困が課題となっており、就学・能力育成を強化
- 職業訓練機関TESDA(技術教育技能開発庁)を通じた国家資格制度の強化
外交・安全保障
- 米国との同盟を強化しつつ、中国とは実利的な関係を維持
- 南シナ海問題では毅然とした姿勢を示している
- 日本との経済・安全保障協力も進め、「多国間関係のバランス」を重視する外交を展開
前政権(ロドリゴ・ドゥテルテ政権)との違い
- 外交姿勢:親中路線から米国寄りにシフト
- 統治スタイル:過激な発言・手法と対照的に、穏健で伝統的な外交を展開
- 麻薬戦争:強硬路線を継承しつつも、人権への配慮を強調
支持層と批判の両面
支持される理由
- イロコス地方を中心とした強固な政治的基盤
- 経済の安定と成長を望む層から高い支持を得ている
- 英語教育・留学・海外就労など、グローバル視点の政策への期待
批判・懸念される点
- 父親の独裁時代の人権侵害や汚職への責任を問う声
- マルコス一族による国家資産の不正蓄財問題が未解決
- 歴史修正主義への懸念
- 透明性や説明責任の不足
- 政治王朝の継続が、民主主義や地域格差の観点から懸念されている
歴代のフィリピン大統領一覧
フィリピンは1946年の独立以来、多くの大統領が国の発展と民主化に影響を与えてきました。ここでは、歴代の大統領とその時代の特徴を一覧で紹介します。
【 歴代のフィリピン大統領一覧 】
| 時代 | 大統領名 | 主な政策・特徴 |
| 1935-1944 | マニュエル・ケソン (Manuel L. Quezon) | コモンウェルス初代大統領、フィリピン語の公用語化、社会正義の推進 |
| 1944-1946 | セルヒオ・オスメニャ (Sergio Osmeña) | 第二次世界大戦後の復興開始、米国からの独立準備 |
| 1946-1948 | マニュエル・ロハス (Manuel Roxas) | 独立フィリピン初代大統領、戦後復興、米比貿易協定 |
| 1948-1953 | エルピディオ・キリノ (Elpidio Quirino) | 農地改革、フク団反乱の鎮圧、経済復興 |
| 1953-1957 | ラモン・マグサイサイ (Ramon Magsaysay) | 農民の味方、汚職撲滅、フク団鎮圧成功、庶民派大統領 |
| 1957-1961 | カルロス・ガルシア (Carlos P. Garcia) | フィリピン第一主義政策、ナショナリズム推進 |
| 1961-1965 | ディオスダド・マカパガル (Diosdado Macapagal) | 農地改革法、独立記念日を6月12日に変更、汚職対策 |
| 1965-1986 | フェルディナンド・マルコス (Ferdinand Marcos) | 戒厳令(1972-1981)、独裁政治、インフラ開発、汚職と人権侵害 |
| 1986-1992 | コラソン・アキノ (Corazon Aquino) | ピープルパワー革命、民主主義回復、新憲法制定、経済自由化 |
| 1992-1998 | フィデル・ラモス (Fidel V. Ramos) | 経済成長(アジアの虎)、電力危機解消、平和協定、民営化推進 |
| 1998-2001 | ジョセフ・エストラダ (Joseph Estrada) | 貧困層支援、汚職疑惑で弾劾・失脚、ピープルパワー2 |
| 2001-2010 | グロリア・アロヨ (Gloria Macapagal-Arroyo) | 経済成長維持、VAT改革、汚職疑惑、非常事態宣言 |
| 2010-2016 | ベニグノ・アキノ3世 (Benigno Aquino III) | 正直な政府(Daang Matuwid)、経済成長、汚職対策、中国との南シナ海紛争 |
| 2016-2022 | ロドリゴ・ドゥテルテ (Rodrigo Duterte) | 麻薬撲滅戦争、インフラ開発(Build Build Build)、親中外交、強権的統治 |
| 2022-現在 | フェルディナンド・マルコス・ジュニア (Ferdinand Marcos Jr.) | 経済発展、インフラ継続、親米外交、デジタル経済推進、農業近代化 |
注記
- 1935-1946年はアメリカ統治下のコモンウェルス期
- 1946年7月4日にフィリピンは完全独立を達成
- 現職はマルコス・ジュニア大統領(2022年6月30日就任)
こうして見ると、フィリピンの政治は一人ひとりの指導者の個性と時代背景によって大きく形づくられてきたことがわかります。
独裁から民主化、改革から安定へ、その流れを知ることで、現在の政治の位置づけもより深く理解できます。
影響力の大きかった大統領TOP5
フィリピンの歴史を動かしてきた大統領のなかでも、特に時代に大きな影響を与えた5人を紹介します。
1. フェルディナンド・マルコス(1965〜1986)

フェルディナンド・マルコス元大統領(1965-1986年在任) 引用元:Wikipedia
最長政権を築いた独裁者
- 21年間の長期政権を築き、戦後フィリピン政治の象徴的存在となる
- 1972年に戒厳令を発動し、憲法改正で独裁体制を確立
- 積極的なインフラ整備を進めた一方、大規模な汚職と人権侵害が発生
- 1986年のピープルパワー革命で失脚し、民主化の転機となった
- その後、息子マルコス・ジュニアが2022年に大統領となり、一族が政治復権
「功績と闇の両面を象徴する存在」として、今もフィリピン政治を分断する象徴的人物。
2. コラソン・アキノ(1986〜1992)
コラソン・アキノ元大統領(1986-1992年在任) 引用元:Wikipedia
民主主義を回復した革命的大統領
- マルコス政権を倒したピープルパワー革命の指導者
- フィリピン初の女性大統領として民主主義を回復
- 1987年憲法を制定し、大統領の再選禁止と人権尊重を明記
- 汚職官僚の排除や農地改革を進めたが、クーデター未遂が多発
- 東南アジアの民主化の象徴として、世界的に称えられた
「民主主義の母」として、強権政治から自由を取り戻した歴史的指導者。
3. ロドリゴ・ドゥテルテ(2016〜2022)

ロドリゴ・ドゥテルテ元大統領(2016〜2022) 引用元:Wikipedia
強権政治で国内外を揺るがせたリーダー
- 元ダバオ市長で、麻薬撲滅を掲げて全国的な人気を得る
- 「超法規的殺害」を容認する強硬政策で国際的批判を招く
- 親中・反米外交に転換し、中国との経済関係を重視
- 「Build Build Build」政策でインフラ整備を推進
- 強いリーダー像と庶民的キャラクターで高支持率を維持
- 退任後、人権問題をめぐりICC(国際刑事裁判所)から捜査対象となる
強権と人気を併せ持った“最も賛否の分かれる大統領”。
4. ベニグノ・アキノ3世(2010〜2016)
清廉な政治と経済成長を実現した改革派
- コラソン・アキノの息子として「まっすぐな道(Daang Matuwid)」を掲げる
- 汚職追放と行政の透明性向上を推進
- 年平均6%以上の高成長を達成し、国際的信用を回復
- 南シナ海問題で中国を国際仲裁裁判所に提訴し、2016年に勝訴
- 誠実な政治姿勢で、民主主義の信頼を再び取り戻した
「清潔な政治」と「安定した経済」を両立させた、戦後屈指のクリーンリーダー。
5. フィデル・ラモス(1992〜1998)
改革と安定をもたらした実務派リーダー
- 元国軍参謀総長で、コラソン政権を支えた調整型の政治家
- 民営化・規制緩和を進め、外国投資を呼び込み経済を活性化
- 電力危機を解消し、年平均5〜6%の成長を実現
- イスラム反政府勢力(MNLF)と和平を達成
- 安定した統治で「アジアの虎」と呼ばれる経済基盤を築いた
経済成長と和平を両立させた、安定と実務の象徴。
フィリピン大統領と英語教育・留学政策

サント・トマス大学(フィリピン最古の大学) 引用元:Wikipedia
フィリピンは「英語が通じる国」として知られ、教育と経済の両面で英語力を国の強みとしています。歴代政権は英語教育を国策の中心に据え、学校教育・人材育成・留学支援を通じて国際競争力の向上を図ってきました。
以下では、英語教育政策と留学生受け入れの主な取り組みを紹介します。
英語公用語政策の維持
- 英語とフィリピン語(タガログ語)を公用語として採用
- 歴代政権が一貫して英語教育を重視
- 小学校から英語による授業を実施
- アジアでも高い英語力を維持し、国際競争力を確保
教育改革と人材育成
- 現政権は「教育を国の成長エンジン」と位置づけ、学力向上とデジタル教育を推進
- TESDA(技術教育技能開発庁)では、英語+専門スキルを組み合わせた国家資格制度を整備(例:英語教師、IT技術者、看護師など)
- 海外就労を見据えた実践的な英語教育を強化
外国人留学生への門戸
- 政府は「アジアの教育ハブ化」を掲げ、英語留学を支援
- 日本人学生にとっても、低コスト・高品質・治安の安定が魅力
- 英語教育の強化と留学生受け入れは、マルコス政権でも国家戦略の柱となっている
フィリピン大統領にまつわる興味深い事実
フィリピンの大統領制には、歴史や文化を映し出す興味深いエピソードが多くあります。
ここでは代表的な事例を紹介します。
最年少・最高齢の大統領
最年少:エミリオ・アギナルド(就任時29歳/1899年)
- フィリピン独立の象徴であり、アジア最年少の国家元首の一人
- 現行憲法では立候補条件が40歳以上のため、この記録は更新されない
最高齢:ロドリゴ・ドゥテルテ(就任時71歳/2016年)
- 強い統治を掲げ、「最年長の現場主義者」として知られる。
大統領一族(政治王朝)について
フィリピンの政治では、特定の家系が長く政権を担う「政治王朝(Political Dynasty)」が特徴の一つです。
大統領経験者の多くは地方に強い支持基盤を持ち、家族や親族が国政・地方政治に継続的に関わっています。
以下の表は、代表的な大統領一族とその関係をまとめたものです。
【 フィリピンの主な政治王朝 】
| 一族 | 主な大統領 | 在任期間 | 関係・特徴 |
| マルコス家 | フェルディナンド・マルコス/フェルディナンド・マルコス・ジュニア | 1965〜1986/2022〜現在 | 親子で大統領を務めた代表的王朝 |
| アキノ家 | コラソン・アキノ/ベニグノ・アキノ3世 | 1986〜1992/2010〜2016 | 民主化を象徴する母子の大統領 |
| ドゥテルテ家 | ロドリゴ・ドゥテルテ/サラ・ドゥテルテ(副大統領) | 2016〜2022/2022〜現在 | 親子で国政に影響を持つ |
| アロヨ家 | グロリア・マカパガル・アロヨ | 2001〜2010 | 父(ディオスダド・マカパガル)も元大統領 |
なぜ政治王朝が生まれるのか?
フィリピンで政治王朝が生まれる背景には、社会構造や文化的な要因が深く関係しています。
地方の有力者が地域社会を支え、血縁や地縁を軸にした政治文化が長く続いてきました。主な要因は次の通りです。
社会構造的要因
- 家族・血縁関係を重視する文化が根強い
- 著名な姓によるネームバリュー効果
- 既存の政治基盤や資金力を継承できる
- 地方有力者(エリート層)による政治支配の伝統
- 地方での貧富格差と雇用依存により、支持者が「恩返し型の票」を投じる傾向
フィリピン人が大統領に求めるものとは?
フィリピン国民が大統領に求めるものは、時代によって変化しつつも、生活の安定と誠実なリーダーシップに集約されます。
人々は政治的な理念よりも「信頼できる人物かどうか」を重視する傾向があり、その期待は次のような点に表れています。
国民の期待
- 汚職撲滅と清廉さ
- 治安改善と麻薬対策
- 経済成長と雇用創出
- 貧困層への配慮
- 強いリーダーシップ(「強い父親像」への憧れ)
- 親しみやすさと庶民性
フィリピン大統領関連のよくある質問(FAQ)
フィリピン大統領制度に関してよく寄せられる疑問をまとめました。基本情報から豆知識まで、簡潔に解説します。
Q1: 次のフィリピン大統領選挙はいつですか?
次の大統領選挙は2028年5月に実施予定です。フィリピンでは大統領の任期は6年で再選は禁止されており、現職マルコス大統領の任期は2028年6月30日までです。
Q2: なぜマルコス家は復権できたのですか?
主な理由:
- 世代交代による記憶の風化(独裁時代を知らない若い世代が有権者の多数を占める)
- SNS時代の情報発信により、「マルコス時代=発展の時期」と再評価する動きが拡大
- イロコス地方を中心とした強固な支持基盤
- ドゥテルテ家との連携(副大統領候補にサラ・ドゥテルテ)
- 経済成長への期待(安定と雇用を求める中間層の支持)
Q3: ドゥテルテ前大統領はなぜ逮捕されたのですか?
2025年3月11日、国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状に基づき逮捕されました。
逮捕の理由
- 大統領在任中(2016〜2022年)の麻薬撲滅戦争で、数千人〜数万人が超法規的に殺害されたとされる
- ICCはこれを人道に対する罪として捜査
- フィリピン警察が空港で身柄を拘束し、オランダ・ハーグのICC勾留施設に移送
ドゥテルテ氏は、フィリピン初の国際法廷で裁かれる大統領であり、アジア初のICC被告指導者となりました。
一方で、国内では「主権侵害」とする擁護論もあり、賛否が分かれています。
まとめ:フィリピンの大統領制から見える国の姿
フィリピンでは、大統領のリーダーシップが国の方向を大きく左右します。
マルコスの長期政権からアキノの民主化、そしてドゥテルテ、マルコス・ジュニアへと続く現代政治まで、常に強権と民主主義の間で揺れ動いてきました。
ピープルパワー革命で民主主義を取り戻した一方、強いリーダーを求める国民性も根強く、ときに人権より秩序を優先する傾向があります。
また、英語を公用語とする教育制度と海外就労・留学政策は、経済発展を支える大きな柱です。
BPO産業や語学留学など、英語力を活かした分野で国際競争力を高めています。
フィリピンの大統領制は、この国の多様性と矛盾を映す鏡といえるでしょう。




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