2022.08.15
前回は、長らく停止されていたフィリピン留学が再開され、2年ぶりに戻ってきた留学生の姿を目にした瞬間に私たちが感じた思いと、QQEnglishがチャレンジする「新しい留学スタイル」について紹介しました。 →前回の記事はこちら 今回は、コロナと戦ったこの2年間の道のりについて、振り返ってみたいと思います。 新型コロナという未知のウイルスによって引き起こされた世界規模のパンデミックがフィリピンに押し寄せて以来、セブ島にある語学学校はどこも存亡の危機に立たされました。もちろん、QQEnglishとて例外ではありません。 日頃からさまざまなリスクヘッジは行っているものの、まさかコロナの蔓延によって入国制限がなされ、フィリピン留学自体が閉ざされることになるとは、想定外のことでした。それでも現実を受け入れ、早急にこの危難に対処する必要がありました。
パンデミックが始まり、セブ島留学の停止が決まったとき、私は真っ先に「再び留学生が戻って来る日まで絶対に日本に戻らない」と誓いました。 フィリピンの医療体制に不安がないと言えばウソになりますが、10年以上一緒に働いてきた仲間を置いて自分だけ安全な日本に帰ることなど、到底できませんでした。 そのときQQEnglishには世界中から500人の留学生が来ていましたが、2020年の3月13日、お別れの挨拶さえもできないあわただしいなか、生徒さんはそれぞれの国へと帰って行きました。 帰国を余儀なくされた生徒さんには、残りの授業のすべてをオンラインで提供することにし、返金を希望する生徒さんには別途返金規定にしたがって授業料をお返ししました。しかし、返金を希望せずにセブ島留学の再開を待っている生徒さんもたくさんいます。 なんとしてもセブ島留学を再開させないわけにはいきません。 3月14日、誰もいなくなったキャンパスで私はフィリピンの先生と一緒にパンデミックを乗り切る決意をしたのです。 QQEnglishでは、オンライン英会話とセブ島留学を同じ割合で運営していました。そのため、セブ島留学がなくなるということは、売り上げの半分がいきなり消えることを意味していました。売上が半減した以上、経費を減らさなければ経営として成り立たないことは明らかです。 そこで、今まで留学で使っていたITパークのオフィスのうちオンライン英会話で使う2500㎡のみを残し、残りの4フロアー4400㎡を手放しました。生徒さんのドミトリーとして使っていた40軒の家も処分し、できるだけ身軽にしました。しかし、それだけではとても生き残れません。 経費のなかで最も大きいのは、人件費です。正社員として雇用している先生たちの処遇をどうすべきか、経営者としての難題に私は直面することになりました。 フィリピンではパンデミック対策として、ノーワークノーペイの自宅待機を先生たちにお願いできました。しかし、日本とは異なり政府から補助金は一切支給されないため、自宅待機中は無給になってしまいます。 今まで一緒に頑張ってきた先生たちに、無給での自宅待機をお願いすることはできません。まして解雇することなど、まったく考えませんでした。みんなでどうやって生き残るかを必死に考えたのです。 もはや節減できる経費も思いあたらないなか、とれる手段はひとつでした。「残ったオンライン英会話を倍の規模にする」、これしかなかったのです。守ることでジリ貧に陥るよりも、攻めることで活路を開こうと決めたのです。 とはいえ、10年の間オンライン英会話事業に精一杯に取り組むことで築いてきた現在の売上を、いきなり倍にすることは至難の業です。それでも、みんなで生き残るためにはやり切るよりありません。先生たちやスタッフと一丸となり、新しい仕組み作りへの挑戦が始まりました。
結果から言えば、パンデミックが始まってからオンライン英会話の規模は3倍以上になりました。 私たちの使った手段は単純です。 留学生さんの使っていた寮に泊まり込み、ネット環境が安定したオフィスから質の高い授業を提供することでした。極めて単純ですが、これが結果的に成功したのは、他の多くのオンライン英会話サービス提供会社との差別化に繋がったからです。 普通のオンライン英会話は、先生の自宅から教える在宅勤務で提供されています。これは、パンデミックの最中でも働きやすいビジネスモデルでした。しかし、私たちはパンデミックの間もオフィスからの提供にこだわりました。 QQEnglishでは専用の光回線が入った最新設備の整ったビルから授業を行うため、どこよりもクリアーに快適に授業を提供できます。このことは、自宅から授業を行う他のオンライン英会話との大きな違いです。 さらに、宿泊施設とオフィスが同じ建物内にあるため、きめ細かく生徒さんの需要に合わせたスケジュールを組めます。先生たちのトレーニングもしっかりできます。 まさに同じ釜の飯を食べていたことにより、みんなが「授業の品質をいかに高めればよいのか」という共通の目標を、24時間ずっと考えることになりました。 私たちは簡単に始められる自宅からのオンライン授業にはあえて背を向け、共同生活をしながら徹底的に生徒さんの英語上達を目指したのです。結果はすぐに表れました。在宅でサービスを提供しているオンライン英会話との圧倒的な違いが、次第に明らかになっていったからです。 そのことは退会率を比べてみれば、すぐにわかります。QQEnglishの退会率は、他社の半分と言われています。良い環境で学べて、しっかりと英語が上達してさえいれば、生徒さんはやめません。退会率が目に見えて下がっていくとともに、生徒さんの総数はどんどん膨らんでいきました。 英会話学校で生徒さんを増やす一番良い方法は、生徒さんに継続して学習してもらうことだったのです。
フィリピンはアジアでどこよりも早く、なおかつ厳しいロックダウンを断行しました。そのため、学校に泊まり込んで働くということは、家族と一切会えないことを意味していました(外から中にコロナを持ち込ませないためです)。 私は当初、学校に泊まり込みで働いてくれる先生は、それほど多くないだろうと思っていました。なぜなら、フィリピン人が皆、家族思いであることを知っていたからです。フィリピン人が家族に寄せる情の深さは、日本人の比ではありません。ところが一度泊まり込みを決めれば、長い間家族と会えないのです。 隔離期間がどのくらい長く続くのか、誰にもわかりません。数ヶ月、あるいは数年にわたって、愛する父母や兄弟姉妹、子供たちと会えない覚悟が必要だったのです。 もちろん私には、先生たちが学校に泊まり込みで働くように強要することはできません。どのくらいの先生が応じてくれるのか心配していたところ、予想外のことが起きました。 ほとんどの先生たちが、「海外に出稼ぎに行ったつもりで働く」と言ってくれたのです。私はうれしさがあふれて言葉に詰まるとともに、先生たちが寄せてくれる信頼感に何としても答えなければいけないと、その責任の重さを噛みしめました。 はじめのうちは厳しい現実が待っていました。セブ島留学の仕事がなくなりオンライン英会話のみとなったため、先生全員に回せる分の仕事はとてもありません。 それでも先生たちは、「在宅勤務の学校よりも良い授業を行うことで生徒さんを増やすことさえできれば、家族を助けることができる」との思いを胸に、何事も前向きに取り組んでくれました。一度たりとも家に帰って家族と会うこともできないのに、先生たちの士気はとても高かったのです。 今回はここまでです。 次回は、学校でのろう城生活が始まってから終わるまでの顛末(てんまつ)について紹介しますね。お楽しみに!