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10年英語を学んでも話せない理由。文科省が認めた「600〜1,000時間」の壁

10年英語を学んでも話せない理由。文科省が認めた「600〜1,000時間」の壁

文部科学省が公式資料に書いた「授業時間の限界」を、正直に読み解く

私はセブ島で英語学校を運営しています。日本から来る生徒さんに、必ずと言っていいほど言われる言葉があります。

「10年も英語をやったのに、ひとことも話せないんです」

そのたびに私は、「あなたのせいではないと思いますよ」とお伝えしてきました。ただ、これまでは私の経験則にすぎませんでした。

ところが2026年8月、その経験則を裏づける文書が、国の側から出てきたのです。

1. どんな文書が出たのか

文部科学省が公開したのは、中央教育審議会・初等中等教育分科会・教育課程部会の「外国語ワーキンググループ取りまとめ(案)」(2026年8月に公開された会議後修正版)です。

【次期学習指導要領】2030年度からの実施が見込まれているものに向けた、英語教育の設計図にあたります。まだ「案」の段階であり、科目名などはすべて仮称ですが、方向性はかなり具体的に描かれています。

主だった中身を先に整理しておきます。

項目内容
高校の科目名「英語コミュニケーション」→「英語コミュニケーション(総合)」、「論理・表現」→「英語コミュニケーション(発信)」に見直す方針(いずれも仮称)
語彙国が複数のコーパスを参照して「基盤語彙リスト」を作成。指導すべき語彙数を精選も含めて見直す
文法中学校の文法事項のうち使用頻度の高いものを本文で明示し、指導対象の焦点化と難易度の適正化を図る
AI・デジタルデジタル学習基盤の活用を学習指導要領に明記。その一つとして発達段階に応じたAIの適切な活用も明示的に位置づける
履修免除一定の要件のもと、CEFR B2レベル相当以上の英語力があれば、外部試験を活用して高校の必履修科目を免除・振替できる制度運用を開始する方向

現場の先生方にとってはどれも重い話です。ただ、私がいちばん驚いたのは、これらの各論ではありませんでした。

資料に添えられた「補足イメージ②」という、たった1枚のスライドです。

2. 国が「10年も習ったのに話せない」と書いた

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「外国語ワーキンググループ取りまとめ(案)※会議後修正」

このスライドの左上に、こう書かれています。

10年も習ったのに英語が話せない…

これは批判ではありません。文科省自身が「社会の期待・認識」として掲げた見出しです。そして右側で「ギャップを少しでも埋めるためにできることは?」と問い、その背景を5つ挙げている。その一つ目が、これでした。

① 必要な学習時間は到達したい水準で異なるものの、学校教育だけでは時間に限界

  • 英語話者が日本語の一般的な専門能力を身に付けるために必要な授業時間数は2,200時間
  • 一方、日本の小中高の外国語の授業時間は600〜1,000時間程度

「学校教育だけでは時間に限界」。

この一文が、補足資料だけでなく本文にも入っています。本文(改善の方向性)では「日本の英語の授業時間の限界や、英語を使う機会の少なさ」を踏まえて対応を示す、と書かれている。

国が、公式の文書で、授業時間には限りがあると認めたわけです。私はこれを、責任逃れとは受け取りませんでした。むしろ、現実を直視した誠実な記述だと思っています。

なお、先に申し上げておきます。この資料が挙げている背景は5つあり、時間はそのうちの一つです。

残りは、語彙の整理、学習方法の指導、英語を使う環境の少なさ、そして「そもそも伝える内容が整理されていない」こと。原因は一つではありません。

ただ、その筆頭に「時間」が置かれていることには、やはり意味があると思うのです。

3. 2,200時間という数字を、正確に理解する

ここは丁寧に説明させてください。多くの記事が誤読しているところだからです。

2,200時間の出典は、アメリカ国務省の外交官養成機関FSI(Foreign Service Institute)です。ただしFSIが測っているのは、英語を母語とする人が日本語を習得するのに要する時間です。

日本人が英語を身につけるのに2,200時間かかる、という調査ではありません。文科省の資料も、そこは正確に「英語話者が日本語の…」と書いています。

FSIは世界の言語を難易度別に分類していて、日本語は最上位の「超難易度言語(Super-hard languages)」に入ります。

中国語、韓国語、アラビア語と同じグループです。88週間・2,200授業時間で、ようやく職業上の実務に使える水準に届く、とされている。

では、なぜ文科省はこの数字を持ち出したのでしょうか。

日本語と英語が、言語として遠い関係にあることを示すためだと思われます。ただし、方向を入れ替えれば同じ時間になる、という単純な話ではありません。

文字体系も、音の仕組みも、学習環境も違います。「日本人が英語を身につけるには2,200時間必要だ」という根拠は、どこにもありません。

それでも、この数字を600〜1,000時間の隣に並べたこと自体に、意味があると私は思います。学校の授業時間だけで十分な学習量を確保するのは難しい。文科省はそう問題提起しているわけです。

「日本人は英語が苦手」なのではありません。日本語と英語が、たまたま遠い組み合わせだった。

そのうえで、学校で確保できる時間には限りがある。それだけの話ではないでしょうか。

4. 学校の授業時間を、実際に数えてみました

では「600〜1,000時間程度」というもう一方の数字は、どこから来ているのか。

気になったので、学習指導要領の標準授業時数から自分で計算してみました。

学校段階標準授業時数1コマ実時間換算
小3・4(外国語活動)年35×2年=7045分約52.5時間
小5・6(外国語)年70×2年=14045分約105時間
中1〜3(外国語)年140×3年=42050分約350時間
高校(必履修のみ〜全科目履修)105〜59550分約87.5〜496時間
合計735〜1,225単位時間約595〜1,003時間

きれいに一致しました。約600〜1,000時間です。

※文科省の資料に算出根拠の記載はありませんが、標準授業時数を実際の時間に直すと、この数字とほぼ重なります。

高校で英語をあまり取らなかった人は600時間側、標準単位数をすべて積み上げた人で、およそ1,000時間。なお高校は、必要に応じて標準単位数を超えて配当することもできますので、これを上回る学校もあります。

10年という響きに対して、実際に確保されている授業時間は、この程度なのです。

これで自在に話せるようになったら、そのほうが不思議だと思われませんか。

ここには、注釈が2つ必要です

ひとつ。小学3・4年生の「外国語活動」は、教科ではありません。 検定教科書は使わず、数値による評定もつきません(学習状況は文章で評価されます)。音声に慣れ親しむための時間です。

教科として英語を学ぶのは、小学5年生から高校3年生までの8年間。最初の2年間は助走にあたる、と考えたほうが実態に近いでしょう。

もうひとつ。この仕組みが始まったのは2020年度です。 小3から外国語活動、小5から教科としての英語。これは比較的新しい制度です。

それ以前は、外国語活動があったのは小学5・6年生だけ(2011年度から)。さらに前の世代には、小学校の英語そのものがありませんでした。

つまり、今この記事を読んでくださっている方が30代以上であれば、600〜1,000時間よりさらに少ない時間しか受けていない計算になります。

中学と高校だけで数えると、およそ440〜850時間。中学の授業時数が今より少なかった世代なら、さらに下がります。

「話せなくて当たり前」の度合いは、大人のほうがむしろ強いのです。

5. では、足りない分をどこで埋めるのか

ここからが本題です。原因がわかっても、時間が増えるわけではありません。

ただ、私はこの数字を見て、少し希望を感じました。「気の遠くなるような差」ではなかったからです。

具体的に足し算をしてみます。オンライン英会話を続けた場合、どれだけ積み上がるのか。

1日あたり頻度1年間6年間8年間
25分週5日約108時間約650時間約866時間
30分毎日約183時間約1,095時間約1,460時間
60分毎日365時間約2,190時間約2,920時間

驚かれたのではないでしょうか。

1日30分を毎日、小学5年生から高校3年生までの8年間続けると、約1,460時間。 学校で積み上がる600〜1,000時間を、軽く上回ります。

1日1時間なら、6年間で約2,190時間。 学校の2倍から3倍を超える量です。

1日30分です。テレビ番組を1本見る時間、スマホをなんとなく触っている時間と、そう変わりません。それを毎日積むだけで、学校教育がまるごともう一つ手に入る計算になる。

もちろん、毎日続けることがいちばん難しいのは承知しています。ですが「量が絶望的に足りない」のと「1日30分で埋まる」のとでは、見える景色がまったく違うのではないでしょうか。

6. 留学1ヶ月は、学校の何年分にあたるのか

もう一つの選択肢が、短期の語学留学です。

ここでは仮に「1日6時間の授業を週5日」という条件で計算してみます。実際のコマ数は学校やコースによって異なりますので、あくまで目安としてお読みください。

期間授業日数授業時間の合計学校の授業に換算すると
1ヶ月約20日約120時間中学校の英語ほぼ1年分(約117時間)
2ヶ月約40日約240時間中学校の英語約2年分
3ヶ月約60日約360時間中学校3年間(約350時間)を超える

3ヶ月の留学で、中学3年間の英語の授業時間を追い越してしまう。

これは私の主観ではなく、単なる掛け算です。しかも、ここには決定的な違いがもう一つあります。

7. 時間の「量」だけでなく、「中身」が違う

先ほどの文科省の資料には、対応策としてこうも書かれていました。

「家庭学習との効果的な連携による発話時間等の確保

わざわざ「発話時間」と書いてあるのです。つまり国も、授業時間のうち生徒が実際に英語を口に出している時間が足りていない、と認識している。

考えてみれば当然です。40人近いクラスで50分の授業をして、一人ひとりが英語を話す時間はどれほどでしょうか。先生の説明があり、教科書を読み、板書を写す。実際に口を開く時間は、決して長くはないはずです。

一方、マンツーマンのレッスンでは、こちらが話さなければ授業が進みません。逃げ場がないのです。

同じ「1時間」でも、含まれている発話時間がまるで違う。

だから私は、時間の足し算は「量の話」であると同時に「質の話」でもあると思っています。オンライン英会話の30分と、教室での30分は、同じ30分ではありません。

8. 私自身が、どう時間を作ったか

ここで自分の話をさせてください。

私はバイクの輸入事業をしていた頃、イタリア人のパートナーができました。仕事の話は通訳を立てれば済みます。ですが、大好きなバイクの話を、目の前にいる本人と語り合えない。それがどうにも悔しくて、英語を始めました。

最初は単語帳の「ターゲット1900」を必死に覚えました。それなのに、いざ人を前にすると、ひとことも出てこない。あの徒労感は今でも覚えています。

やり方を変えたのは、セブ島に通い始めてからです。仕事を抱えていますから、まとまった休みは取れません。1〜2週間の単位で、細切れにセブへ通いました。

行っては帰り、また行く。それを繰り返して、合計で10ヶ月分ほどの学習になりました。

正直に申し上げると、あれが正確に何時間だったのか、記録は残っていません。ただ、朝から夕方までほとんど授業でした。

フィリピンの語学学校ですから、多くはマンツーマンです。こちらが口を開かなければ、授業が進まない。単語帳とにらめっこしていた頃とは、時間の中身がまるで違いました。

もうひとつ、大きかったのは目標の立て方です。私は毎回、次のセブ行きまでの宿題を、ばかばかしいほど小さく決めていました。

「次までに20センテンス覚える」。それだけです。大きな目標は立てませんでした。20なら、どんなに忙しくても達成できるからです。

継続とは、意志の強さではなく、達成できる大きさに刻むことなのだと思います。

9. 「学習方法が分からない」高校3年生が6割という現実

もうひとつ、同じ文科省資料に載っていた数字を紹介させてください。

  • 高3のうち、「英語力を高める学習方法が分からない」は6割
  • 大学生の英語運用能力(自己評価)は1年生が一番高いというデータも

10年学んで、高校を卒業する段階で、6割の生徒が「どう勉強すればいいか分からない」と答えている。そして大学に入ると、英語力の自己評価は下がっていく。

これは生徒の怠慢でしょうか。私はそうは思いません。

現行の学習指導要領は、コミュニケーション活動を中心とした授業改善を進めてきました。文科省自身、それを成果として資料に記しています。

それでもなお、6割の生徒が「学習方法が分からない」と答えている。つまり「卒業後も自分で伸ばし続ける方法」を伝えるところまでは、手が回っていなかったということでしょう。

今回の取りまとめ案が、第二言語習得研究や認知心理学の知見を踏まえた「学習方略の指導」を新たに打ち出しているのは、まさにここへの対応です。

国は、変えようとしています。ただし次期学習指導要領が小学校で始まるのは2030年度ごろと見込まれており、告示もまだこれから。今すでに中学生・高校生であるお子さんには、間に合いません。

10. 数字は、絶望ではなく設計図です

長くなりました。整理します。

  • 学校の英語は600〜1,000時間。30代以上の世代なら、さらに少ない。これは国が公式に示した数字です
  • 文科省は「英語が話せない」背景を5つ挙げており、その筆頭が「学校教育だけでは時間に限界」でした
  • 大きな要因の一つは、学校だけでは確保しきれない学習時間と、実際に英語を使う機会の少なさです
  • 1日30分のオンライン英会話を毎日8年続ければ、約1,460時間が積み上がります
  • 1ヶ月の留学は中学1年分、3ヶ月の留学は中学3年分の授業時間に相当します
  • そして、同じ1時間でも「話している時間」の密度がまるで違います

「10年やっても話せない」のは、あなたの努力不足だけの問題ではありません。大きな要因の一つは、時間の設計にあったのです。

そして設計の問題であるならば、設計し直せばいい。私がセブに通い始めたのは40歳のときでした。そもそも私は、haveとmakeのスペルすら怪しかった。

それでも話せるようになったのは、才能があったからではなく、単に時間の使い方を変えただけの話です。

もし、お子さんの英語やご自身の学び直しで「何から手をつければいいか分からない」と感じておられるなら、まずは1日25分から積み上げてみてください。

私たちQQEnglishのオンライン英会話も、セブ島留学も、この「足りない時間」を埋めるための一つの選択肢としてご用意しています。

一番いやな、最初の壁さえ越えてしまえば、あとは続けるだけです。

データ出典

「外国語ワーキンググループ取りまとめ(案)※会議後修正」
文部科学省 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会 外国語ワーキンググループ/2026年8月公開
PDF:https://www.mext.go.jp/content/20260804-mxt_kyoiku01-000051325-01.pdf
※「学校教育だけでは時間に限界」「2,200時間」「600〜1,000時間程度」「英語が話せない背景の5項目」「高3の6割」「大学生の英語運用能力は1年生が一番高い」「発話時間等の確保」「コミュニケーション活動を中心とした授業改善の成果」「高校の科目名見直し」「基盤語彙リスト」「B2レベル相当以上での履修免除」は、いずれも本資料に基づく

Foreign Language Training(外国語研修)
U.S. Department of State, Foreign Service Institute(アメリカ国務省 外交官養成機関)
※日本語を含む「Super-hard languages」は88週間・2,200授業時間とされる

小学校学習指導要領・中学校学習指導要領(学校教育法施行規則 別表第一・別表第二)
文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/index.htm
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu
※「単位については、1単位時間を50分とし、35単位時間の授業を1単位として計算することを標準とする」「特に必要がある場合には、標準単位数の標準の限度を超えて単位数を増加して配当することができる」、および各科目の標準単位数(英語コミュニケーションⅠ=3単位ほか計17単位)、必履修科目としての「英語コミュニケーションⅠ」は本資料に基づく

「新学習指導要領全面実施に向けた小学校外国語に関する取組について」(教育課程部会 資料2/令和元年9月4日)
※小学校3年からの外国語活動(35単位時間/年)、高学年の教科化(70単位時間/年)は本資料に基づく

「小学校外国語活動サイト」
文部科学省
※平成23年度(2011年度)より第5・第6学年で年間35単位時間の外国語活動が必修化された経緯は本サイトに基づく

※本記事内の学習時間シミュレーション(オンライン英会話の年間積算、留学期間の授業時間換算)は、上記の公式データをもとに筆者が試算したものです。留学の授業時間は「1日6時間・週5日」という仮定に基づく目安です。
※次期学習指導要領の実施時期は、告示前のため確定していません。本文中の「2030年度ごろ」は現時点での見込みです.。

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